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●●●　コラム　●●●

2020/3/29 「受け流す」

　最近読んでいる本にこの言葉が載っていました。

　「どのような時にも人生には意味がある
　
　なすべきこと　満たすべき意味が与えられている

　あなたを必要とする何かがあり

　あなたを必要とする誰かがいる

　その何かや誰かのためにあなたにも出来ることがある

　その何かや誰かはあなたに発見され実現されるのを待っている」

　「夜と霧」に書かれているヴィクトール・フランクルの言葉です。

　彼はナチスの強制収容所に収容された精神科医です。私はずっと以前に一度読んだだけなのですが、すごく心に残った本でした。（もう一度読みたい本の一つです。）

　最近読んだ本は感情をリセットする方法について書かれた本で、その本の中で夜と霧の上記の文章が紹介されていたのです。

　新型コロナウイルスの情報をテレビやネットで見ていると、いろんな情報に踊らされてしまいがちです。もちろん、未知のウイルスだからこそ、いろいろな意見や見解があるのは仕方がないことですけれど・・・。

　苦しいこと悲しいことを乗り越えた先に成長した自分がいるとイメージできれば少し前向きになることができます。

　夜と霧の中で書かれていたのは強制収容所での不安や恐怖しかない生活の中でも、希望を失わず前向きに明るく生きている人をフランクルは目の当たりにしました。悩んで悩んで苦しんで苦しんだ先に一筋の光を見つけたら生きていけるのだと彼は言います。

　災害でも事故でも自分がいくら気を付けていても起きてしまうとき、理不尽なことが起こったとき、やり場のない気持ちの収めどころとして、これを乗り越えたら成長できる、そう思うことで前向きに問題に向かうことができると思います。どうしてこうなってしまったのだろう？何か悪いことをしたのだろうか？自分だけなんで損しているのだろう？と考えても解決できないのだし、考えれば考えるほどネガティブな感情に支配されてしまいます。

　苦しい時を乗り越えた先の自分をイメージすると脳から快楽物質が分泌されるそうなのです。例えば苦しいトレーニングを終えた後のビールとか美味しいものを沢山食べている自分をイメージするとそれだけで気分が上がりますよね？

　それだけで、よーし頑張ろう！って思えますし、このために自分は頑張ってきたんだ～って思ったりします。苦があるから楽があるのです。楽のために苦があるのかもしれません。

　だから、ストレスを感じ行き詰ったときはこの先にある楽しいことを考えましょう。成長した自分をイメージしましょう。

　私もコロナで外出を自粛している日々を送っていますが、この生活を乗り越えた時に成長していると思うようになりました。大切なこと、大切じゃないこと・・・惑わされているだけのこと、そういうことを立ち止まって考えるいい機会だと思うようにしています。

　変えられないことと闘うことが最大のストレスなのです。ストレスは闘わず受け止めず受け流すことが大切です。毎日感染者の数がニュースで取り上げられ、オリンピックの延期が発表され、いつコロナは終息するのかわからないですし、先の見えない不安な情報ばかり目に入ってきます。

　こういう状況はどうすることもできないのだから、できないことを悔やんだり不満を口にしても仕方がないのです。受け流す・・・難しいかもしれません。

　だからと言って諦めるのとは違います。「夜と霧」の中でも諦め、生きる力を失い死んでいった人が沢山いましたし、抵抗することを諦め、生きることに執着し、ドイツ軍側のスパイになったユダヤ人も沢山いました。

　食材やトイレットパーパーの買い占めに走る人たちは・・・スパイになってしまった人の考え方に似ているものがあると思います。生きるために人を裏切ったり犠牲にしても仕方がないのだという利己的な考えです。

　受け流すということは受け入れるとは違います。受け入れるということは肯定することですが、受け流すということは抵抗もしないけれど服従もしていないのです。虐待されている子が自分が悪い子だから殴られる・・・という風に思うことがよくありますが、それは諦め受け入れ自分で考えることをやめてしまっている状態です。子供であっても、自分で考える力を失っていなければ絶対おかしいと気づくはずです。

　話を戻しまして・・・だから、今のこの大変な状態を乗り切るには「受け流して」そして冷静に考えることが大切だと思います。悲観的にならず、だからと言って楽観的にもなりすぎず。自分が成長できることを考えてひとつひとつ実践していく。

　貯金を崩しマスクを手作りした高校生がテレビで話題になりましたが、彼女は自分が出来ることを考えて実行しただけだと思います。この機会に子供とじっくり向き合っている親御さんもいるでしょうし、節約料理を作っている人もいるでしょうし、本を読んだり映画を見たり、勉強したりと自分が成長できることを楽しんでいる人も沢山いるはずです。

　たとえ仕事を失ったとしてもやり直せばいいのだし、お金がなくなってもまた稼げばいい。命があれば何度でもやり直せるのだから。人間はそうやって過去に災害や戦争を乗り越えて生き抜いてきたのだから。

　私も明るい未来をイメージして自分のできることをひたすら探して実践して、いつかくる明るいその時を待ちます。　合掌